福蔵院(ふくぞういん)は、新義真言宗豊山派で正式名を白鷺山正幡寺と言います。本尊は不動明王坐像。開山を頼珍といい、大永元年(1521年)に寂滅しました。そのため『新編武蔵風土記稿』(江戸後期の武蔵国の地誌)では、この寺の創建を「文亀・永正のころ(1501~21年)なるべし」と推測しています。宝暦12年(1762年)隣の八幡神社とともに火災に遭い、堂宇残らず灰になってしまい、記録は残っていません。境内の鐘楼の梵鐘に「寛延二年十月(1749年)」の銘があります。静かな境内が広がるお寺です。 十三仏 山門の脇に中野区の文化財の標示板がある十三仏が並んでいます。 不動明王(初七日)、釈迦如来(二七日)、文珠菩薩(三七日)、普賢菩薩(四七日)、地蔵菩薩(五七日)、弥勒菩薩(六七日)、薬師如来(七七日)、観世音菩薩(百か日)、勢至菩薩(一周忌)、阿弥陀如来(三回忌)、阿しゅく如来(七回忌)、大日如来(十三回忌)、虚空蔵菩薩(三十三回忌)の13体の石仏です。 この13の仏菩薩は、死後の忌日を司るもので、冥界で生前の審判を受ける死者の救済を願って祀られたものです。 銘によれば、8体は、寛文六年(1666年)の大日如来像を最古として、貞享二年(1685年)の普賢菩薩像に至る19年の間に造立されたものです。残る5体は破損したものと見られ、現存するものは百余年後の寛政八年(1796年)に真言講中の27人によって再建されたものです。このように、13体揃った石像は都内でも珍しく、江戸時代後期の庶民信仰の証になります。
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